夢中夢を見た

夢を見た。前半が学校もので、学祭か何かのシーンだった気がする。そこから家に帰る途中、白昼夢か電車の中のうたた寝か、夢中夢を見た。夢の中でもこの夢中夢の話を人に話したので、記憶がやけにはっきりしている。

道を歩いていたら大きな柑橘類の実が落ちていた。黄色くてまん丸だった。周りを見ると塀に囲われた空き地にその柑橘類の木が立っている。道にあると車に潰されてしまいそうなので、塀の中にこの実を投げ入れようと思って、木のほうに向かって力いっぱい実を投げた。すると実は想像よりも綺麗な軌道で飛んでいって、木のてっぺんあたりに落ちるかに見えた。
そこには大きなカラスがいた。本当に大きい。体が中型犬くらいあって、羽を広げたらワシのように見えたかもしれない。そのカラスは飛んできた実を器用に弾き返して、実は再び私の近くの地面に落ちた。何を思ったか私は再挑戦してみた。同じことが起きた。カラスは怒っているわけでもなく、淡々と実を弾き返している。遊んでいるように感じたから、私も投げ続けられたのかもしれない。キャッチボールを続けるうち、カラスがいる柑橘類の木は、段々と、木に見えなくなってきていた。葉がなくなり、枝が太くなり、石像か建物の様相を呈してきた。辺りの空気も重く淀んでいる気がする。その時私に恐怖はなかったけれども、このままどこか別の世界にいくのかもしれないとは感じていた。
突然、カラスは木の梢から私のいる場所と逆の方角に飛び去った。一瞬で全ての異変が元通りになった。木はわさわさと葉を茂らせ、爽やかな風が吹いた。実はあっけなく木の下の地面に落ちた。私は狐(カラス)につままれたのだと思ったけれど、嫌な気は全くしなかったので、上機嫌で歩き出した。

夢中夢から覚めた夢の中の私は、やはり機嫌良く家に帰った。そしてその夢からも覚めた現実の(多分、現実の)私も、目覚めの感覚は悪くなかった。うちの文鳥に会いたいなあ、と思った。